「今、どのような行動を取れば、自分の理想とする未来に近づけるのか?」
今年のノーベル経済学賞が発表され、シカゴ大学のリチャード・セイラー教授が受賞しましたね。筆者も「行動経済学」には非常に興味があり、今回のテーマとして取り上げました。
「行動経済学」を簡単に説明すると、私達の行動は感情に支配されています。そのためすべての行動を合理的に判断することは不可能である。という前提に成り立っている経済学です。
突き詰めて考えていくと、世の中にある限られた資源をいかに有効に活用していくかを研究することにより、人々がどうすれば幸せな生活を送ることができるようになるか、「心」に着目した学問です。まさに今、これから変化激しい時代を生き抜く上で重要なヒントがそこにはあります。
行動経済学に「コンコルドの誤り」という言葉があるのをご存知でしょうか?ビジネスをしていると、時に大きな方向転換を必要とする局面に直面することがあります。損失をできるだけ小さくして利益を生み出す為にも、今後リーダーとなる人は「コンコルドの誤り」を理解しておく必要があるでしょう。
コンコルドの誤りとは何か?
「コンコルドの誤り」とは、商業的に大失敗してしまったコンコルドに由来した言葉です。かつて、世界初の超音速旅客機としてコンコルドが人気を博しました。しかし、プロジェクトを進めるにつれて様々な問題が発覚します。航空会社に違約金を払いプロジェクトを終了させた方が損失が少なくなるという試算が出ていたにも関わらず、これまでの投資を惜しみプロジェクトを強行させ、結果大赤字を引き起こしてしまった事例が元になり生まれました。
まさに「わかっているけれどやめられない」状態と言えるでしょう。冷静に事例として聞くと間違った判断をしていることがよくわかりますが、いざ渦中に陥った場合、コンコルドの誤りと同じような失敗をしてしまう人が多く存在します。
損切の必要性
コンコルドの誤りを引き起こす人は、過去を見ています。本気でビジネスに取り組んでいればこそ、それまでの労力や時間、お金などに固執してしまっているのです。しかし、過去は過去。既に過ぎ去っています。大切なのは未来でしょう。
「今、どのような行動を取れば、自分の理想とする未来に近づけるのか?」という基本に立ち返れば、時には採算の出ていないプロジェクトやビジネスは“切る”という選択もできるはずです。
株式投資で言うところの「損切」にあたります。損失を最小限に食い止める為に損失額の少ない段階で株を処分するように、不要なプロジェクトやビジネスを切ってしまうのです。心理的には抵抗があるかもしれませんが、実は合理的な考え方と言えるでしょう。損失が少なければ、新しいビジネスにスムーズに移行することができ、方向転換もしやすくなります。
勘違いしている人もいますが、損切したからと言ってこれまで培ってきた経験が無駄になるわけではありません。結果的に失敗してしまったとしても、新しいプロジェクトやビジネスに経験やノウハウを活かしていけば、新しい道で成功に近づきやすくなります。採算が合わなくなってきたら、現実的に「今」の状況を分析し、引き際を見極めることが必要です。
方向転換が成功の鍵になることも!
あずきバーなどでおなじみの井村屋には、面白いエピソードがあります。実は井村屋の創業者である井村和蔵氏は、井村屋を作る前に米相場で失敗しているのです。普通なら心が折れそうですが、井村和蔵氏は諦めず、全く経験がないにも関わらず「(ようかんなら)作れそうな気がする」という理由だけで和菓子製造に乗り出します。そして、現在まで続く井村屋の礎を築きました。
様々な企業を分析してみると、要所要所で方向転換をしています。井村屋の場合は極端かもしれませんが、時に大胆な決断が、ビジネスの成功を呼び込むことが多々あります。これまでの経験だけで判断していては、それ以上の成長は見込めません。枠をはみ出してこそ、新しい活路が開かれていきます。
ビジネスで損切した時は、同時に飛躍のチャンスです。採算の取れないプロジェクトやビジネスを切って生み出した時間やお金を有効に活用し、自分の求めている未来へ向けて、効果的な投資を行っていく勇気が必要です。
まとめ
どんなにビジネスセンスに優れた人であっても、立ち上げたプロジェクトやビジネスが全て上手くいくわけではありません。得よりも損が大きくなってきたなら、冷静に現状を分析し、時に損切をしてコンコルドの誤りを回避しましょう。大きく方向転換することで、今は新しい利益の出る未来を呼び込める時代になっています。
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LeverageShare編集部
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