皆さんは、「プロセスマネジメント」という言葉をご存知でしょうか。
簡単に直訳すると、プロセスマネジメントとは、仕事の流れ・工程(=プロセス)を管理することによって、結果を最大にするマネジメント手法のことです。多くの経営者やコンサルタントの方は、「プロセスマネジメントの品質が高まれば、必然的に事業は成長していく」と主張されています。
ですが、本当に仕事の流れ・工程を管理するだけで、事業は成功するのでしょうか?もしそれが本当だとすると、恐らくそこには、簡易な解釈にはとどまらない「プロセスマネジメントの概念と運用方法」があると考える方が自然でしょう。
そこで今回は、「結果を出すための、プロセスマネジメントの考え方と基本」について、お話していきたいと思います。
プロセスマネジメントとは何か? ──プロセスは事業・業務の「見える化」に繋がる
プロセスマネジメントとは何か?についてもう少し詳しく説明していきます。
はじめにプロセスマネジメントとは、「仕事の流れ・工程(=プロセス)を管理することによって、結果を最大にするマネジメント手法」ということで説明しました。ですが、その説明だけではイメージを持ちにくいという方もいらっしゃるかと思いますので、具体的に例を持って説明してみましょう。
皆さんはとある中小企業(100人規模)の人事採用担当だったとします。ある日、上長から「営業部の人員が2名不足しているので、採用活動を掛けてほしい」と言われました。その時皆さんは、どのように採用活動を開始して、進めていくでしょうか?(下の図を確認する前に、まずはご自身で考えてみてくださいね)
<人事採用担当の、採用活動(中途採用)の流れ ※一例>
上記のように、「営業部の人員2名の中途社員を採用する」という、文章では一文で片付いてしまう業務であっても、実行するためにはいくつものステップを含めた流れ(プロセス)があるのです。また、採用業務を携わったことのない方でも、このようにプロセスで表わされると、イメージも付きやすくなるのではないでしょうか。
更には、各プロセスに目標数値を設定することによって、更に各プロセスが必要とする行動量や行動品質も見えてきます。先ほどのプロセスに、「目標内定者数2名」から逆算しての、各プロセスにおける目標数値を設定してみましょう。
<人事採用担当の、採用活動(中途採用)の流れ ※書類審査以降に目標数値を設定した場合>
いかがでしょうか。このように各プロセスに目標数値を掲げることによって、更に業務が完遂される確度も上がってくることのイメージが付いたのではと思います。
もし、採用活動のプロセスを一切意識せずに業務を行っていたら、どうなるでしょうか。また、各プロセスに対して具体的な目標設定を掲げずに進めた場合、どのような結末になることが考えられるでしょうか。きっと、非常に時間がかかってしまったり、希望する人員がなかなか獲得できなかったり、最悪のケースでは「せっかく採用したのにミスマッチだった」ということも起こりやすくなってしまうことでしょう。
ここでお伝えしたかったことは、「業務の流れをきちんとプロセスで把握しておくこと」、「各プロセスにおいて具体的な達成目標を掲げること」によって、品質の高い業務がされやすくなるということです。これは、採用活動に関わらずほぼすべての業務についても当てはまることでしょう。
「何事も小さな仕事に分けてしまえば、特に難しくない」
上記の文言は、世界の店舗数約3万3千を誇るマクドナルドの創業者レイ・A・クロック氏の言った科白です。つまり、どんなに難解な業務であっても、プロセスで分解し、分解した一つ一つの行動を取り上げてみることによって、アプローチは格段にされやすくなるということです。そして、業務を分解せずに結果だけを求めようとするから難しくなったり、手痛い失敗をしてしまうのです。
つまりは「業務を分解する」=「分ければ解る」という考え方が、
「プロセスマネジメント」の考え方の基本なのです。
プロセスは出来上がって終わりではない
さて、業務を進める上で「プロセスが重要だ」ということはご理解いただけた(もしくは「初めから分かっていた」という方もいらっしゃることでしょう)と思いますが、ではそれであとは何の心配もなく進められるか──というと、そうではありません。プロセスを作った後も、業務の結果を出す・仕事を成功していくためには続いてのアクションが必要になってくるのです。
では、どのようなアクションが必要か──。続いても、具体的な例を使って説明しましょう。
今度は企業向けのサービスを販売している営業マンの業務の流れでお話していきます。皆さんはその営業マン(ここでは「Aさん」としておきましょう)の上司になったつもりで、ご確認ください。
- <企業向けサービスを販売する営業マン Aさんの業務プロセス>
Aさんの業務が、上記のようなプロセスと数値であった場合、皆さんはどのような改善の行動を取るのが望ましいと考えますでしょうか。営業チーム平均の月の受注数と比較すると、Aさんの受注は1/3ほどしかありません。
「顧客打ち合わせからの受注までの成果率が低いことは確認できるけれど、上記のプロセスだけでは明確な改善アクションを建てるのは難しい」と思われた方も多いことでしょう。実際、これだけの情報だけでは具体的な対策はおろか、ピンポイントで課題・問題点を提示することも困難です。では、そのような時にどうすれば良いかというと、「更にプロセスを細分化する」という手段があります。今回のケースでは、問題となっている「顧客打ち合わせ」のフェーズで、更にプロセスを細分化できないか、ということを考えていきます。
<企業向けサービスを販売する営業マン Aさんの業務プロセス(「顧客打ち合わせ」を細分化したケース)>
受注に至るまでの顧客打ち合わせにおいて、「ヒアリング」→「提案・見積もり提示」という過程があったとき、それもプロセスに加えたうえで数値を照らし合わせると、より状況が明確になってきます。
上記図の場合でいうと、Aさんは初回の顧客打ち合わせの数は他の営業チームメンバー同様にこなしているものの、2回目以降の顧客打ち合わせ(提案・見積もり提示フェーズ)に移れる割合が少ないことが確認できます。ただし、いったん提案・見積もり提示のフェーズに行けば、受注までの成果率は他の営業チームメンバー同様の確率で受注に至っています。ここまで把握できると、Aさんの受注数向上への課題は、「初回ヒアリング時の顧客打ち合わせ」にある、ということが見えてきます。
このように、仕事・業務をプロセスに沿って運用していった後にも、課題・問題点が出てきたときはプロセスを見直し、改善していく必要がある、ということですね。言い換えると、プロセスは作成するだけではなく、運用し改善していく必要があるということです。
プロセスマネジメントの基本的な役割
・仕事・業務のプロセスの作成
・仕事・業務のプロセスの運用と改善
プロセスを効率的にマネジメントする方法
ここまで、プロセスは作成するだけでなく、運用し続け、適宜改善していくことが大切であることを説明しました。では、プロセスを効率的にマネジメントしていくためにはどうすれば良いでしょうか。
何よりも重要なことは、そのプロセスを管理する担当(プロセスマネジメント担当)を明確に設定しておくことです。多くの場合、これらは事業部長やチームリーダーが担うことになるでしょう(※ 業務プロセスの規模によって責任を持つ担当は変動しますのでご注意ください)。
プロセスマネジメントの担当を定めた後、担当される方は、プロセス全体と各プロセスを、「計画(PLAN)」、「行動(DO)」、「観察(SEE)」の3つのステップで見ていきます。
<プロセスマネジメントの「計画(PLAN)」、「行動(DO)」、「観察(SEE)」の3つのステップ>
プロセスマネジメント担当(プロセスマネジャー)は上記のように、プロセス全体または各プロセスを計画し、運用しながら管理し適宜修正を行い、効果を最大限まで高めていくのです。
プロセスマネジメントの「計画(PLAN)」、「行動(DO)」、「観察(SEE)」の3つのステップは、ひとつの業務のみならず、事業全体を見ていくうえでもとても有効なフレームワークです。例えば新規事業設立の際は、
・計画(PLAN)
事業戦略の立案 事業体制の構築/事業計画の立案 バリューチェーン(事業運用プロセス)構築
・行動(DO)
事業運用プロセスの管理(見える化、言語化) 最適な「手順」「仕組み」「仕掛け」の実施
・観察(SEE)
効果測定、結果の共通認識、定着支援
といった形で進めていくと、より推進力を高めていくことができるでしょう。
<弊社「プロセス特化型」アプローチ手法>
まとめ
ここまでお読みになられて、如何でしたでしょうか。「プロセスマネジメント」という言葉を知らなくとも、すでにそのような取り組みをされていた、という方も多いと思います。その場合は、ご自身の担っているプロセスマネジメントの役割の重要さを、更に意識されることによって、より活動の品質も向上されていくのではないでしょうか。
現在でも、「最終的な結果」(売上や会員数、コストなど)にフォーカスされすぎていて、途中のプロセスがしっかり見られていない企業・組織は多くあります。もしくは、スポット的な取り組みに注力しすぎて、前後のつながりが明確になっていないまま闇雲に活動している部署やチームも多いようです。
ご存知の方も多いと思いますが、業績の上がらない要因は、社員が「仕事の進め方がわからない」と感じている、もしくは「目標や役割の認識不足」である場合が圧倒的に多いと言われています。つまり、多くの組織・企業では、「結果を出すための仕事の進め方」や「目標達成に向けた各人の役割の認識を明確にすること」が、非常に強く求められているのです。
そして、それら組織・企業が持つ重要な課題を解決するための最も効果的な手法こそが、まさに「プロセスマネジメント」と言えるでしょう。
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LeverageShare編集部
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