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組織はなぜ変われないのか?「言葉が世界を創る」社会構成主義から見る組織変革

組織はなぜ変われないのか?「言葉が世界を創る」社会構成主義から見る組織変革

この記事を読まれている皆さんに、質問です。

皆さんは、世の中は「変えることは出来る」とお考えでしょうか?それとも、「変えることはできない」とお考えでしょうか?「世の中」だと範囲が広すぎるという方は、皆さんが属する「組織」について考えてみてください。

「人は、世の中や組織を変えていくことが出来る」と答える人、「(国の首相や組織の代表のような立場であった場合は別として、それ以外の)人は世の中や組織を変えていくことはできない」と答える人、それぞれいらっしゃることでしょうね。ではもし仮に、「世の中や組織を変えていくことが出来る」と答えた人で集められた組織Aと、「世の中や組織を変えていくことはできない」と答えた人で集められた組織Bとがあったときに、より変革していけるであろう組織は、AとBのどちらでしょうか。

──おそらく殆どの方が、「組織Aの方が、変革していけるだろう」と答えたのではないでしょうか。「当然じゃないか」と思われた方も多いのではと思いますが、ここで皆さんに更に質問です。「組織Aの方が変革していける」と皆さんが思うのはなぜでしょう?(是非、言葉で表してみてください)

また、変革が「適切なもの、求められているもの」であるとしたときに、「変革できる」と思っている人が多く変革の確度が高まる、というのが多数派の意見であったとき、それにも関わらず、なぜ「変えていくことはできない」と意見する人が出てくるのでしょうか?

現実的に、組織がより良い成長を目指し「変革」を行おうとしたときに、ほとんどの組織が変革に失敗する(統計では約80%以上が変革に失敗すると言われています)と言われています。

今回はそんな「組織の変革」について、そして組織の変革を行う際、ベースの思考としてフォーカスされることの多い「社会構成主義」について、お話していきたいと思います。

 なぜ今、多くの組織で変革が求められてきているのか?


企業・団体に「あなたの組織では今、変革が求められていますか?」というアンケートを取ると、大体100社あったら8割の80社くらいが、「変革が必要」と答えてきます。──なぜこれほど多くの組織が、変革を求めているのでしょうか。

変革を求める理由は、それこそ組織によって異なるでしょう。ですが、その根底としてあるのが、現在の世の中が、非常に変化が早く、多種多様化してきていることがあげられます。

2000年からインターネットの普及に伴い、世の中はビジネスサイクルの急速な短縮化と知識や技術の更新スピードの高まり、経営環境の複雑化という形で企業や働く人々に大きな影響を与え始めてきています。そのような時代背景から、これまで通例・鉄板とされてきた考え方や定説は短期間で陳腐化されるようになっていき、それは、企業や組織内で「常に学び続け、変化に適応し続けるべき」という、変革への意識を伝播させ定着させていく発想にもつながっています。
「これからは個人の学習成果を高めるだけでなく、組織単位で学習していくことが大切だ。そうでないと、現代の複雑性にスピーディに適応し、それぞれの組織で自律的に変化を先取りして価値を創造していくことは出来ないだろうから」
(ピーター・センゲ)

上記の科白は組織変革の第一人者とも言われる、アメリカの経済学者、ピーター・センゲによるものです。彼の言う通り、これまでは学習や変革というと、「個」を対象として語られることが多かったのですが、現代社会においては「組織」のみならず「外部パートナー」との関係を強化しシナジーを追求しないと、世の中のスピード感についていけなくなっています。

ちなみに、皆さんの所属する組織には「変革」は必要ですか。それとも、これまでと同じやり方、進め方でも問題はなさそうですか。──おそらくここでもほとんどの方が、「変革は必要」と応えると思います。

それでは、実際に変革をする際の流れについて、見ていきましょう。

組織変革とは、どのような手法で、どのように進めるものか?


「組織の変革」とは、どのような手法・プロセスで進めるべきものなのでしょうか。いきなり「組織を変えよう」と言って、変わるものなのでしょうか。──そんなに簡単に変わるものなら、誰も苦労はしませんよね。

通常、組織変革を行う際は、以下のプロセスで進めていきます。

◇ 組織変革の進め方・プロセス

組織変革のプロセス大切なことは、まず1.にある「ありたい姿、あるべき姿を思い描き、『変革していこう』という意識を高めていく」ことです。そもそも変革していこうという強い気持ちがないと、組織の変革は成り立たない、ということですね。その際に重要となってくるのは、あるべき姿(=ギャップアプローチ)とありたい姿(=ポジティブアプローチ)の両方の視点で変革への意識を高めていくことが重要です。

変革への意識を高めた後は、2.にある変革後のビジョンを掲げていきます。そしてそのビジョンを組織内で共有化していき、ひとりひとりのメンバーがビジョンを認識して、それに向かって行動できるようにしていくのです。

組織の変革をしていく上で、以下の2つは、特に重要となってきます。
・組織を変革していこうという強い意志を、組織内で共有できること

・新しい組織を実現していく為のビジョンを、組織内で共有できること

ですが、ここでまた、冒頭お話した問題にぶつかることになるでしょう。

──そもそも、「組織を変革していこう」という想いは、組織内で共有しきることはできるのでしょうか。人の考え方や価値観は様々であり「新しい組織を実現していく為のビジョン」を、組織内で共有レベルまで昇華させていくことは、そう簡単に出来ることではありません。

「変革への想い」・「共有ビジョン」を築く為に必要となる、
「社会構成主義」の考え


誰もがきっと、「上記のような矛盾を解決しようとしても、なかなかうまく行かないだろう」と思われるのではないでしょうか?

実際その通りだと思います。集団がもつ、何通りもの考え方、価値観を、その中の一つに向かせるというのは、(催眠や暗示といったアプローチを行わない限りは)難しいというか、ほぼ不可能です。つまり、そのようなアプローチでは、非常に大きなパワーと労力を必要とします。

── では、人が組織を自律的に変革していくことは不可能なのでしょうか?

そこで役立つのが、社会構成主義の考え方です。

社会構成主義は、世の中の事象はすべて、「人々の認知によって変わっていくもの」という考えに基づきます。例えば組織」にフォーカスを当てた場合は、そこに属する人の思い次第で、組織はいかようにも変わっていく、という考えです。そして、組織変革を行っていく際には、従来の「組織の変革を成功していく為にはどうすれば良いか」という考えから離れ、「組織の変革が良いものになっていけるために、私たちはどう行動すれば良いか」という考えからアプローチしていきます。

 社会構成主義とは


社会構成主義とは、近代哲学にあるような「世界というのはすでに秩序があり存在していて、その中に人間がいて、世界を認識している」という考え方を否定して、「人間の存在がまず初めにあって、人間が認識する結果として、世界が構成されていく」と考えます。

文章だけからするとやや過激な内容にも捉えかねませんので、ひとつ例を持って説明してみましょう。
◇「腐敗臭」(腐った匂い)」の定義について

現代の人々において、また世界中の文献(小説などの物語)にて、「腐った匂い」は非常に忌み疎まれるものとして扱われています。ですが、ある一定の時期より過去にさかのぼると「腐った匂い」について記載される文献の数は驚くほど少なくなります。そして、その古い時期においては、腐った匂いはそれ程人々から疎まれるものとしてではなく、寧ろ自然的なものとして、扱われているのです。──その認識が変化するその「一定の時期」とは、世界中でペスト(黒死病)が流行した時期と重なります。

当時、ペストが人やペットの排泄物や屍肉を媒体として伝染することを知った人々は、その時期から腐敗臭を「忌むべきもの、避けるべきもの」というものとして扱うようになりました。そしてその行動と概念化が、ペストが撲滅された今でも、色濃く残っているのです。

つまり、現代の人々が「腐敗臭」に対して持つ定義やイメージというものは、古来から不変的なものとしてあったのではなく、近代のペスト流行と共に形成されていった──まさに、人間の認識の集積によって、出来上がっていったものなのです。

今、私たちが現実だと考えているものは、これまで私たちが学んできたことを使いながら見ている世界である、というのが社会構成主義の解釈になります。つまり、これが、世の中は「秩序ある不変のもの」ではなく、「私たちの認識次第で如何様にでも変容されていくもの」という社会構成主義の基本の考え方、ということですね。

組織の変革に対していうなれば、「どのような組織の変革が望ましいか」と考えるが従来までの考え方で、そうではなく、「これから組織のあり方、変容の仕方」をイメージし話し合い、認識を深めていくのが、社会構成主義の考え方なのです。社会構成主義では、人々が話す「言葉」の意味と、使われ方、その背景にあるイメージを重要視します。そのイメージは、「これまでどう捉えられてきたか」ではなく、「当事者である私たちはどう捉えていくとよいか」を意識して扱われます。

──さて、本当に「話し合い認識を共有しあう」だけで組織の変革はできるのでしょうか。ここからは、いくつか例をもって説明していきましょう。

社会構成主義は、言葉とストーリーを重要視する


ここでは実際に言葉の持つ意味を考え抜き、共有ビジョン化していった事例を2つほど、紹介していきます。

■ 事例1)イノベーションを多く発生していくために取った、Appleの共有ビジョンとは


必要なのは共通のビジョン、それを提供するのがリーダーシップだ。
-What they need is common vision and that is what leadership is.-

アップルの創業者、スティーブ・ジョブズは1984年、上記の言葉を残しました。アップルは、共有ビジョンをとても大切にしていることでも有名な企業だったのです。そんなアップル社は、初期に以下のような共有ビジョンを掲げていました。
テクノロジーを介して何百万人もの人の生活を変える
-improve the lives of millions of people through technology-

Appleがこれからイノベーションを多く出していくためには、単に「売れる」「満足度の高い」ものではなく、「人の生活を変える」くらいのサービスを提供して行こうという強いメッセージが必要だと、ジョブズは考えたのでしょう。

そして、実際に移行iPadやiPhone、iPodなどの画期的な商品を次々と世に送り出したAppleは、ジョブズが描いたビジョンを実現してきたのです。その有限実行を続ける姿勢こそが、Appleがその他大勢の企業と大きく違うところであり、人々に愛される理由の1つと言えます。

ジョブズの類まれなリーダーシップもさることながら、「テクノロジーを介して何百万人もの人の生活を変える」という言葉の影響力の強さにも、何か感じるものはないでしょうか。言葉は、それ自体が人々に信じられる段階になって、とても巨大なエネルギーを出していくこともあるといわれていますが、その好事例と言えるのではないでしょうか。

■ 事例2)限界集落であった岡山県美作市を見事復活させたNPO法人「英田上山棚田団」


続いては、NPO法人として、地域おこし活動を行っている団体、「英田上山棚田団」について紹介しましょう。舞台となる岡山県美作市では、以前は美しい棚田が8300枚も広がっていた上山も、人口減、少子高齢化、耕作放棄地と化した棚田、間伐もままならない里山 …と絵に描いたような過疎地と化し“限界集落”と呼ばれるところまできていました。

そんな状況下、NPO法人「英田上山棚田団」が地域おこしとして棚田再生活動から、さまざまな施策を行います。例えば高齢者が棚田を行き来するのは大変だろうと「セグウェイ」を作業に取り入れたり、毎日行っていた草刈りを野焼きに変更して刈り取った草の産廃処理の手間を軽減させたりと、更には地元にタップダンサーが越してきたということで地域住民全員でタップダンスを踊って身体運動と地域コミュニケーションの活性に結び付けたり──かなりユニークな施策が多いようにも感じられますが、結果として、なんと現在20ヘクタールの棚田を再生させることに成功したのです。

そして、そのサクセスストーリーは仲間から仲間を呼び、様々なスキルを持ったコミュニティが生まれ、現在においても活動はさらに活性を強めています。

地域おこしにて大きな成功を収めたNPO法人「英田上山棚田団」はどのような共有ビジョンや思いを掲げていたのでしょうか──そのあたりについては、以下地域おこし協力隊隊長の梅谷さんのコメントを参照するとイメージも付くのではないかと思います。
(成功の秘訣は、)「僕らに突き抜けた“やっちゃった感”があるからだと思います。我々の活動の中で一番“やっちゃった感”が強いのは野焼きです。毎日ひたすら草刈りしてるんですけど、草刈ったらそれをどこかにやらないと開墾できないじゃないですか。正規は運び出して産廃処理場に持っていくんですけど、そんなことやってられっか!と(笑)そんなことでまごついていたら棚田再生なんてやってられないし、それならもう、燃やしちゃおうか、と。地元のおじいたちも「燃やしゃええ」って言ってるし(笑)

で、なにが最強かというと、僕らが野焼きをすることに地域の同意を得られているというところです。なかなかそんな地元はありません。

<中略>

「僕らは色々仕掛けているように見えてると思いますけど、基本農繁期は一日中外で田んぼにいます。毎日目の前の草を刈って、振り向いたら田んぼが開けていた。綺麗だな、じゃあ、ここでなにかしたいね、みんなを呼びたいねって他の事に派生していくんです。でも基本は草刈りです。」

引用:「限界集落を”集楽”に!美作市地域おこし協力隊が ”全国最強”とよばれる秘策とは? _ greenz.jp.htm」 http://greenz.jp/2013/10/03/mimasaka-mlat/

明確なヴィジョンとして掲げているかは不明ですが、「やっちゃった感を大切に」、でも「地元の人たちとの信頼関係は大切」で、かつ「基本は草刈り」──そういった行動規範が、上記メッセージから色濃く見ることができます。そして、その思いがあったからこそ、成功率10%程と言われる地域おこしにて、ここまでの大きな成功を得られたのではないでしょうか。

まとめ


社会構成主義的見地からの、組織変革における2つの事例をご紹介いたしましたが、いかがでしたでしょうか。

社会構成主義における組織変革の考え方は以下の通りです。
組織は、そこに属する人々の状態や活動、そして共通認識によって刻一刻と変わっていくものである。組織変革は、組織の変容をより「ありたい姿」「あるべき姿」に近づけていくための、有効な行動手段である。

そして、変革に必要なものとしては、「共有ビジョン」、その背景にある「人の思い」です。

人の思いと、そこから発せられる言葉、メッセージで、世の中がどんどん新しく形成されていく。そう考えると、私たちのこれから先の未来について考えを走らせる際にも、よりエキサイティングな想いを持つことができるのではないでしょうか。

 
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LeverageShare編集部

これからは「個人」と「会社」が共に輝き成長する時代です。 「Leverage Share」はシェアする時代の新しい仕事づくりを支援します。 奪い合うのではなくて分かち合う、そんなきっかけとなる記事を投稿していきます。

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