成長速度を早める為に求められる、データマーケティングとPDCA手法をご紹介
早速ですが、皆さんに質問です。
「現在の業務において、収集しているけれど『有効活用』できていないデータはありますか?」
また、“YES”と答えた方はその理由は何でしょうか?おそらく、多くの方が“YES”とお答えになられたことでしょう。また、その理由の多くは、以下のいずれかに当てはまるのではないでしょうか。
・ 現状を知る上では良いデータなのだが、そこから「じゃあどうする?」という意見や行動に結びつかない。
・ データ収集の意図が共有されていない。または明確になっていない。
・ 現在収集されているデータは、今重要視されている課題を解決・解明していく為のものではない。
・ データを有効活用するためには、更なる分析や他のデータとのかけ合わせが必要だが、そのアクションが出来ていない。
インターネットの技術発展と浸透に伴い、私たちは非常に多くのデータを手にすることが出来るようになりました。普段の業務においても、それらのデータを活用しながら遂行していくことが不可欠となりつつあります。
一昔前によく言われていたフレーズで、「情報弱者」と「情報強者」というものがありましたが、これは情報をより多く持っている人の方が優位に立ちやすい、という主張によるものです(厳密には、情報の「活用度合」のギャップも含めて語られることも多いですが)。ですが、現在では誰もがインターネットやその他調査ツールを使うことによって、殆どの欲するデータは入手できてしまい、逆にその手に入れた(もしくはふんだんに入ってくる)データを、「どう扱っていけば良いかわからない」「有用なデータと不要なデータが混在している」というような、いわゆる「情報のもてあまし」を感じられていることのほうが多いのではないでしょうか。
「データをしっかり活用しよう」──でもその実際は? とあるゲーム開発会社の事例
とあるゲーム開発会社(従業員規模 180名 年間売上25億)では、スマートフォン向けゲームの新規開発に向けて、以下のデータを参考にしました。
1)現状のスマートフォンゲームのマーケット状況(売上、ユーザー数、人気カテゴリ)
2)自社及び付き合いのあるゲーム会社から情報収集して導き出した、直近の開発ゲームのコストの平均
3)メインで立つプロデューサーのこれまでのゲーム開発のヒット率
4)現在運用中の自社ゲーム内のユーザーの行動(ログ)分析
1)のスマートフォンゲームのマーケット状況については、ここ数年拡大し、その傾向は向こう5年続くだろうという予測が立てられました。競合他社は増えつつあるものの、まだまだ自社の売上やシェアを伸ばしていく余地はありそうだ、という判断も出来ました。
2)のコストについては、スマートフォン端末の機能向上に伴い、1作品開発ごとの開発総コストが年々上昇してきていることが確認できました。業界全体で品質水準の向上が出られているので、ここではしっかりコストをかけてでも、自社開発のクォリティを上げていくべきだ、という判断をしました。
3)の担当プロデューサ候補については、これまでヒットタイトルを数本手掛けたプロデューサに指揮を取らせつつ、他2名の優秀なプランナーと、彼らのアイデアやプランを実現していけるにふさわしい開発者を用意しました。
──上記1)~4)内で導かれたデータからの行動としては、なかなか盤石と言える準備・体制であったと言えるかも知れません。
結果どうなったかというと、この会社はこれから5年間にわたり3本の大型タイトルをリリースしましたが、すべてヒットタイトルにはならず、売り上げはさんざんたるものでした。また、その際にかかった開発コストやプロモーションコストが蓄積していき、当初15億あった会社の資本も3億まで目減りしてしまったのです。
ゲーム業界は非常にボラティリティの大きい市場としても有名ですが、上記のような結果になってしまったのは、一体何が原因だったと皆さんは思われますか?また、少しでも失敗を軽減できるために、事前のデータマーケティング(データの収集と活用)をより良くすることは出来たのでしょうか。
多くの企業が「データの活用」をうまく行えない理由は──
多くの企業が悩まれている、「データを活用している」としながらも、成果や結果になかなか結び付かない──その際に考えられる大きな理由としては、以下の3つが挙げられます。
1)フォーカスされているデータが、結果・成果を求める為の指標値に適していない、もしくは不十分
→データが本来の目的に合っていない
2)PDCAサイクル内に進捗データのアウトプットが含まれていない。もしくはその為のツールがない。
→データを活用し続けるための環境が整っていない
3)データ活用に対する、組織・チーム内の共通見解がバラバラであったり、コミュニケーションがなされていない。
→データが共通言語化されていない
前段のスマートフォンゲーム開発会社の事例においては、「1 データが目的に合っているか」はどうでしょうか。一見目的に沿っているようにも見えますが、そもそも当たりはずれの大きい業界では、ひとつひとつのプロジェクトに心血を注ぐことだけでなく、中長期的な組織視野を持てるデータ設定(例えば、「今後数年間において開発コストはどれだけ上昇していくことが見込まれるか」であったり、「プロデューサがヒットタイトルを創出するまでの、育成・成長観点が見られるデータ」であったり、「一定期間に開発ラインを「何本」持たせるのが合理的か」)が何より大切となってきます。この会社のケースで言うと、その点はやや準備不足感が否めないでしょう。
また、「2 データを活用し続ける為の環境」ではどうでしょうか。開発期間の長いコンテンツ制作においては、期間中の行動品質を上げる為のデータ(例えば、テストプレイ等でリリース前にクォリティチェックできる為のデータ収集等)も数多く行うことも大切でしょう。ですが、上記会社においてはその為のデータ活用プランが用意されていません。
更には、一人の天才クリエイターの存在で大きな成功が収められることもあるようなコンテンツ開発業界においては、主観性と客観性の折り合いが難しくなるケースも多く、「3 データの共通言語化」がうまく進まないことも多々あります。どんなにデータ結果がこれから行おうとしているアクションにアラートを上げていても、心情的にそれを信じたくない気持ちや「きっとうまく行く」という想いが、データ結果を軽んじてしまう──という経験をされた方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。もちろん、ひとつのプロジェクトや事業を進めていく上で想いや情熱はとても大切な要素です。ですが、その行動の際には必ず、よりどころとなるデータ(客観的な情報・事実)も必要になるのです。
データを活用していく上で大切なことは、
1)本来の目的に活用できるデータを設定し、収集すること
2)データを活用し、業務PDCAに適応していくための環境を整えること
3)活用データを客観的事実として捉え、組織、チーム内で共通言語化すること
──この3点になります。──皆さんの職場ではいかがでしょうか。この3点が意識された、データ活用が実現できていますでしょうか。
データ活用して、成果と成長を促進させる、「データドリブンマーケティング」とは──
より効果的な「データ活用」を目指して、近年多くの企業にて関心が高まってきている「データドリブンマーケティング」(Data Driven Marketing(R))という言葉はご存知でしょうか。データドリブンマーケティングとは、日々急速に増え続けている膨大なマーケティングデータを統合的に活用し、PDCAサイクルを回しながら成果を上げていく為の手法です。
冒頭でもお話しましたように、デジタル化とネットワーク化、そしてデバイス技術の進歩により私たちが取得できるデータの種類と量は加速度的に増えていきます。そして、それら蓄積されたデータは企業のマーケティング活動の結果・成果を定量的に判断できるようになります。──もちろん、前章でお話した、「データ活用で大切な3つのこと」を実施されている前提が必要となりますが。
データドリブンマーケティングのイメージ1 (マーケット視点)
消費者への価値提供とデータ収集のPDCAサイクルを高速で回していき、自社製品・サービスの品質向上を推進していきます。
上記図のように、データドリブンマーケティングは、
1)「消費者の行動をデータとして集約」し、
2)「集めたデータを分析(そして見える化)」を行い、
3)「データをもとに再調整・ブラッシュアップ」を行い、
4)「消費者に新たな体験価値・サプライズの創出」を行う一連の流れを指します。
なぜ、このようなPDCAサイクルが重要視されているか──それは、技術進歩の速度ペースが増してきている現在において、既存の製品・サービスの陳腐化もまた早まってきており、企業は常に顧客に対して「現状からより良い、そして新しい体験価値・サプライズ」を提供する必要が出てきているためです。自社の製品・サービスと、それに伴うマーケットアクション品質を常に維持向上していくためには高速のPDCAサイクルが求められ、そしてその際にC:Checkの糧となる取得データ自体の品質が、大きく問われる為なのです。
データドリブンマーケティングを、マーケティング担当の視点で見たらどのようなプロセスになるかも見てみましょう。
データドリブンマーケティングのイメージ1 (マーケティング視点)
組織またはチームでデータドリブンマーケティングを推進し、成功していくためにはデータを
1)「作る」、2)「集める」、3)「見える化する」、4)「使う」
──この4つを正しく理解する必要があると言えます。
そもそもデータに基づいてマーケティングアクションを進めていくためにはデータそのものが必要です。まあ、当たり前の話ですよね。もし現状「有効なデータがない」という場合は、「どんなデータが必要か」を考えて、そして取得するデータの規則を作る必要があります。既にデータがある、という場合も「データが分散していて殆ど使い物にならない…」というケースも多いので、まずは「データの規則」づくりとして環境をしっかり 整備する必要があります。
続いては、データを集めるアクションです。データと一言で言ってもそれはWebログから消費者の購買履歴、その他アンケートや口コミなど、非常に多くの種類のものがあるでしょう。それらをどういった形式で、どれくらいの頻度で集めていくかについても、事前にしっかりプランニングしておくことが大切です。このときに、データ収集ツールとして何を使うか、という観点も重要です。最近では「BIツール」と言って、業務システムなどに蓄積された膨大なデータを蓄積・分析・加工し、意思決定に活用できるような形式にまとめる専用のソフトウェアも多く出ていますので、参考にされると良いでしょう。
データを作り、集めた後は、そのデータから傾向を読み解けるようにするために、Excelや Webダッシュボードを使ってデータを見やすくビジュアライズしていきます。ここで意識すべきことは組織・チーム内の関連メンバー全員が「見やすい」と感じられるようにデータをまとめていくことです。
せっかく有用なデータを収集しても参照するときはSQLのコマンド文を打つ必要があって、システムの知識のない企画・営業担当は直接確認することができない──といった組織もまだまだ多く存在するようですが、大切なデータが共通言語化されていないのは、PDCA効率化の障害になるだけでなく、言語の通じるグループ、通じないグループといった不要な断絶が発生し、チームワーク醸成にも悪影響を及ぼすことがあります。
そして集めたデータを「見える化」した後、最後にデータを「使う」フェーズに移行します。
ここでの「使う」とは単にデータを見て分析するということだけでなく、データを「製品・サービス、またはマーケティング・販促アクションの更なるブラッシュアップのための施策に活かしていく」ということを指します。ここで重要となってくるのは、適切な「客観的仮説」を立てること、そして新たなデータを取得するための「試行」を意識することです。
データを使用する最大の目的は、「現状をより良いものにする新しいアイデアやプラン」を見出すことです。ですが、データの怖いところは、データの切り出し方やスコープのしかたによってはどんな解釈(主観的判断)も出来てしまうところです。ですので、そうならないようにするために、データ分析の際は「客観性」を意識したうえで仮説を立て、そしてその仮説が適切であったかを次回のデータ収集時に検証できるようにするための「試行」を行うのです。
データドリブンマーケティングのイメージ1 (PDCAサイクル時)
データドリブンマーケティングについて、市場視点、マーケティング担当視点、PDCAサイクル視点でそれぞれ説明してきましたが、初めてこの言葉をお聞きになられた方も、大分イメージを持ててきたのではないでしょうか。イメージが持てたということは、つまり「実行が出来る」ということです。「デジタルシフト時代」を成功に導く為に今後必要不可欠な「データドリブンマーケティング」今後、この手法をいかに活かせるかが勝負の分かれ目です。
まとめ
ここまでの話をまとめてみましょう。
■ データを活用するうえで、以下の観点を持つことが大切である。
1)本来の目的に活用できるデータを設定し、収集すること
2)データを活用し、業務PDCAに適応していくための環境を整えること
3)活用データを客観的事実として捉え、組織、チーム内で共通言語化すること
■ データ活用によってマーケティングのアクションと効果を高めるのが「データドリブンマーケティング」である。
データドリブンマーケティングとは、日々急速に増え続けている膨大なマーケティングデータを統合的に活用し、PDCAサイクルを回しながら成果を上げていく為の手法。
■ 組織またはチームでデータドリブンマーケティングを推進し、成功していくためには以下の4つのプロセスを正しく理解する必要がある。
1)データの規則を作る
2)データを集める
3)データを「見える化」する
4)データを使う(施策に活かしていく)
データはマーケティングの方向性・指針を示すための、大切な要素です。そして、データは単なる「情報」として扱うだけでは「使いこなす」為の属人的なスキルが問われ、共通言語化されないものになってしまいます。
外部環境の変化が目まぐるしく、多様な価値観が形成されつつある昨今において、データ活用とデータドリブンマーケティングはそういった複雑な市場を認知していく上での、重要なアプローチになるのです。
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LeverageShare編集部
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